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外国人技能実習生は、いずれ本国に帰ることが前提の在留資格でした。
しかし、技能実習生は一定の条件をクリアすることで、特定技能1号に移行することができます。
特定技能1号は最長5年の在留資格。
つまり、技能実習の最長5年にプラス特定技能1号5年、雇用期間を伸ばすことができます。
ところが、実はこの2つは本来、全く目的の異なる制度。
きちんと理解していなければ、思わぬトラブルに繋がるかもしれません。
今回はそんな特定技能について、詳しく見ていきましょう。
技能実習生と特定技能外国人の違い
技能実習の目的は、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律」の第一条に以下のように記されています。
「技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護を図り、もって人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術または知識の移転による国際協力を推進することを目的とする」
つまり、海外(特に途上国)より実習生を受け入れ、実習生の本国では修得が困難な技能を習得してもらうことが目的なのです。
それに対して特定技能は、「深刻化する人手不足に対応するため、生産性向上や国内人材の確保のための取組を行ってもなお人材を確保することが困難な状況にある産業上の分野において、即戦力となる外国人を受け入れていく仕組みを構築する」
つまり、国内で深刻な人材不足に悩んでいる業種に対して、それらの分野に精通した外国人を雇うことで即戦力を得よう、人手不足を解消しようというものです。
その目的は真逆と言えるでしょう。
他にも、就業可能な業務や業種の違い(参考:技能実習制度 移行対象職種・作業一覧(令和5年7月24日時点 88職種161作業))、在留期間の違い、転職の可否、受け入れ方法や人数、家族帯同の可否等が異なります。
詳細は後ほど、メリット・デメリットでご案内します。
技能実習から特定技能に移行するには
技能実習から特定技能への移行の条件は、以下の2点です。
●技能実習2号を良好に修了していること
●技能実習の職種・作業内容と、特定技能1号の業務に関連性が認められること
技能実習2号または3号を良好に修了(3年間)すると、技能実習から特定技能1号に移行が可能です。
特定技能の取得は本来、技能試験と日本語試験の両方に合格することが要件となりますが、移行の場合、職種と作業内容に関連性が認められる場合は、これらの試験が免除されます。
また、移行時に技能実習時と異なる業務に変更する場合でも、技能実習2号を良好に修了している場合は、日本語試験は免除されます。
特定技能への移行のメリット
特定技能へ移行することのメリットには以下のようなものがあります。
・引き続き働いてもらえる
実習生を受け入れた会社からよく聞かれるのが、技能実習で3~5年働いてもらったが、ちょうど慣れてきた頃に帰国してしまった、という嘆きの声。
しかし、特定技能1号へ移行すれば、最長5年間、期間を伸ばすことが可能です。
優秀な人材に育った実習生が、さらに最長5年働いてもらえることは、大きなメリットでしょう。
・人数制限がなくなる(一部業種除く)
技能実習生は、常勤職員30名以下の企業は3名、優良企業は6名まで等の受入人数の制限がありました。
しかし、特定技能(介護、建設分野を除く)には人数枠がありません。
・家族帯同が可能に
技能実習生は、制度の目的上、帰国することが前提なので、家族帯同はできません。
しかし、特定技能1号から2号へ移行して要件を満たせば一部可能になります。
雇う側から見れば、より多くの外国人に、より長く働いてもらいやすくなると言えるでしょう。
特定技能への移行のデメリット
反対にデメリットも存在します。
転職が可能に
技能実習は労働が目的ではないため、転職という選択肢は原則存在しません。
しかし、特定技能は就労資格なので、同一の職種であれば転職が可能です。
また、技能実習から特定技能への移行の際の転職も可能です。
同じような業務内容で、他にお給料等の条件が良い所があれば、転職される可能性もあるわけです。
賃金は高くなりがち
特定技能は、技能実習よりワンランク上の在留資格とされるので、賃金も当然、技能実習よりは高くなります。
原則、同等の業務に従事する日本人労働者の報酬の額と同額以上でなければいけません。
移行してもらうことが第一のハードル
技能実習から特定技能に移行するということは、最長10年間、母国に帰れない(一時帰国は除く)ことになります。
家族と会えないことを理由に、特定技能への移行をためらったり、断ったりする人も多いのです。
そうした部分を超えても、この会社で働き続けたいと思ってもらえるかどうか?が重要なポイントです。
まとめ
技能実習は、実習生が日本の企業で技能を身につけ本国に持ち帰ることで、その国の発展に寄与することが目的でした。
しかし、特定技能は真逆で、日本の人手不足に対応するため、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人を受け入れる在留資格です。
技能実習から特定技能へ移行すれば、最長5年から10年まで働いてもらうことが可能になります。
とはいえ、目的が真逆になるわけですから、当然、雇用主側の希望だけで外国人実習生を縛ることはできません。
実習生自身の意志で、働き続けるかどうかを決めるべきです。
また、たとえ特定技能に移行しても、技能実習と違い転職が可能になります。
つまり、働き続けたい企業と思ってもらうことが、大切なのです。
そんな職場作りができれば、きっと外国人に限らず、国内の人材獲得にもつながるのではないでしょうか。
投稿者プロフィール
![西本由利絵](https://www.hr-nextdoor.co.jp/wp/wp-content/uploads/2023/08/nishi-150x150.jpg)